2014年1月24日金曜日

【産学官・異分野】イノベーションの未来を拓く処方箋7 ーシリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出現場(5.ドイツIndustry4.0の挑戦)ー

「岡山大学シーズ・ニーズ創出強化イノベーション対話プログラム2013」では、事業の名前が意味するように「イノベーション(Innovation)」がひとつの“鍵”となっています。しかし、「イノベーション」とはどのようなものでしょうか。「イノベーション」という言葉をヨーゼフ・シュンペーターが形作ってから1世紀が経過しましたが、その時間の中でイノベーションを創出する環境はさまざまに入れ替わりました。その環境の中でイノベーションの“鍵”となるキーワードついて対話を行う会「イノベーションの未来を拓く処方箋」(第7回)を本学津島キャンパスで開催しました。

話題提供者は、本事業実施責任者である岡山大学学長特命(研究担当)・URAの佐藤法仁が務めました。今回の対話は、「シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出現場(5.ドイツIndustry4.0の挑戦)」と題して行われました。

本対話のその1では「シリコンバレーのハブ機能」と題して、カリフォルニア州の北部ベイエリアにあるシリコンバレー(Silicon Valley)の取組について紹介し、その2では「シリコンビーチ台頭の兆し」と題して、南カリフォルニアのロサンゼルス周辺としたシリコンビーチ(Silicon Beach)のイノベーション創出環境について、その3では「イノベーション大国になりつつあるイスラエルの活動」と題して、中東に位置するイスラエルのイノベーション創出活動について、その4では、「ニューヨークのイノベーション好循環への挑戦」と題してのアメリカ東海岸の大都市ニューヨークの活動について紹介。今回はEU圏の中核国に成長したドイツに注目し、「ドイツIndustry4.0の挑戦」と題しての会となりました。

話題提供者の佐藤法仁URAは、EU圏で大規模経済国として頭角を出し始めたドイツについて、2007年には世界的な金融危機の風が吹いたが、それからいち早く立ち直りを見せ、現在は2007年以前の経済状態に戻りつつある点をドイツ企業の時価総額データなどから紹介。特にドイツは、SAPシーメンスBASFバイエルンメルクなどの古くからドイツ経済を支えてきた老舗大企業が頑張っている点。またそれだけではなく、BMWダイムラーフォルクスワーゲンなど自動車産業や機械産業を支えている関連中小企業の台頭が経済の発展を下支えしていること。さらには数年前から議論を重ねてきた新産業創出の足掛かりとして2013年に「Industry4.0」(ドイツ語:Industrie4.0)を打ち出した点などを紹介しました。

佐藤URAは、「Industry4.0(インダストリー4.0)を日本語でどのように訳すかは定まっていないように、日本ではあまり知られていない。しかし紹介したように、ドイツのこの取組はこれまでにない新産業、イノベーションを起こそうとするドイツ政府と産業界の意気込だけではない、戦略に乗っ取った計画が見て取れる。2007年のサブプライムローン問題、翌年のリーマンショックなどの悪材料がある中であえいでいた経済を立て直しつつある中で、“更なる一手”としてIndustry4.0は重要なイノベーション政策であり、産業界へのカンフル剤にもなると考える。具体的にはインターネットなどのデジタルを介して、ヒトとモノを深く結びつけることで、今までにないイノベーションを興すことや、インターネットで集積されたデータを活用して迅速・新規の産業を創出することになる。特にデータについては、膨大なものとなるため、その処理技術やデータを扱える人材に対するマーケット拡大もかなり期待できる。この流れは前回の対話内容のアメリカ・ニューヨークでのeコマースの流れにも見れるように、2014年以降も急速に世界の大潮流となりつつある。今後、わが国もIndustry4.0の動向を見据えつつ、データの大波にうまく乗れる取組が期待される。それがイノベーション創出にも大きく役立つのではないか」と話し、EU圏をさらに牽引しつつあるドイツの国を挙げてのイノベーション創出の取組について、対話を行いました。

「Industry4.0」は、1.0が蒸気機関車などが発明された「第一次産業革命」を、2.0が電力で産業のオートメション化が飛躍的に進んだ「第二次産業革命」を、3.0は近年のコンピューターをはじめとするデジタルテクノロジーが飛躍的に発達した「第三次産業革命」の次に来るものとして「4.0」とされています。1.0から3.0の期間と3.0から4.0の期間は短くなっており、それだけ社会の流れが加速しているとも言えるかもしれません。そのような潮流の中で大学が乗り遅れないためには何が必要なのかを本対話でも深めました。


<過去開催>

第1回 オープンイノベーション(Open Innovation) 大学と企業の関係:http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/09/open-innovation.html

第2回 大学発ベンチャーの“企業”としての自立化:http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/10/blog-post_25.html
第3回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(1.シリコンバレーのハブ機能):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/10/blog-post_30.html
第4回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(2.シリコンビーチ台頭の兆し):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/11/blog-post.html
第5回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(3.イノベーション大国になりつつあるイスラエルの活動):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/11/3.html
第6回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(4.ニューヨークのイノベーション好循環への挑戦):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/11/4.html

国立大学法人岡山大学:http://www.okayama-u.ac.jp/index.html

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